事業承継支援

目次

事業承継支援との出会い

事業承継支援に本格的に取り組むようになって丸5年が経過しようとしています。

5年ほど前、国の事業承継支援事業の一環として、各県に事業承継相談の窓口が開設されることになり、その相談員を受けることが、事業承継のお手伝いに本格的に取り組むきっかけとなりました。
それまでの企業支援業務や身近なところで行われる経営者交替を見て、以前から、事業承継問題の難しさを肌で感じていました。

事業承継は形としては社長交代ですが、社長、後継者の当事者はもちろん、幹部や従業員のなどの関係者にとっても心理的な不安定を感じさせることが多いように思います。この部分にどこまで配慮できるかもバトンタッチ後の経営に大きな影響を与えることになります。

 

企業の社長・後継者を対象としたセミナー(私の事業承継デビューセミナー)では、「事例に学ぶ事業承継」と題し、心理面にスポットを当てた事例をお話ししました。
参加された後継者の一人から 『自分のことばかり考えていた。父(社長)や古参幹部の気持ちも考えるきっかけになった』という感想がありました。当事者となる受講者の多くの皆様から、共感を得ることができたように思います。

事業承継に関しては本当に多くのサイトがありますが、中身は、税務・法律的なテクニック面を中心としたもの多いように思います。

 

このサイトでは、実際の相談事例をもとに、心理面も含め様々な角度から事業承継について考えて行きます。

 

事業承継の3つの問題点

事業承継については、マスメディアで取り上げられる機会が増えています。以前から伝えられている『後継者難』、昨年からは、『特例事業承継税制』が多く取り上げられているように思います。

承継のお手伝いをしていく中で、後継者不足の問題も大きなウェイトを占めていますが、後継者(候補者)がいても準備が進まない、事業承継に関していくつもの問題点があっても相談しない といったことも重要な問題点だと感じています。

セミナーなどでは、

・後継者がいない

・後継者(候補者の場合も)がいても、準備が進まない

・後継者難や準備不足などがあっても、相談しない

 

この3つを“事業承継を進める上での3つの問題点” としてお話ししています。

3つの問題点について、一つずつ考えていきます。

 

問題点1 後継者がいない

➤事業承継の予定はどうなっているか?

事業承継についてのマスメディアの扱いで一番多いのがこの問題ではないでしょうか?

例えば、

『後継者がいる企業は全体の〇〇%しかなく、後継者不在の企業がこのまま承継が行われないと廃業につながり、〇〇万人の雇用が失われる・・・』

 

こんな表現が目に留まります。

 

ところで、『後継者がいる』という回答は、『後継者が確定している』のでしょうか?それとも『確定はしていないが、候補者がいる』というものも含まれているのでしょうか?

様々な企業の事業承継の様子を見ますと、後継候補者がいても、引き継いでくれるとは限らないというのが現状ではないかと思います。

 

『後継者がいる・いない』という割合を伝えるのにもうひとつ注意しなければならないことがあります。
それは、『経営者が若いため後継者を考える時期にない』という企業も後継者未定として扱われている場合があるということです。『若いから考える時期にない』という企業は、除外して考えるべきだと思います。

こうした状況を踏まえて、最近の事業承継についてのアンケートでは、次のような形が多く見られます。

Q事業承継の予定についてお聞きします 

①後継者が決まっており、その後継者に事業を承継する
②後継者は決まっていないが、後継者候補はいる
③後継者は決まっておらず候補もいないが、事業は継続したい
④後継者がいないため、M&Aによる売却を考えている
⑤廃業を検討している
⑥自分がまだ若いので、後継者を決める必要がない

 

この回答から、’’⑥自分がまだ若いので、後継者を決める必要がない’’ を除外して再集計すると、後継者有無の本当の状況が見えてくると思います。

参考までに、私がお手伝いをした山梨県内の複数の地域の複数のアンケート結果を紹介します。

 

この集計結果では、後継者を決める時期が来ている企業の中で、後継者が決まっている企業は、1/3程度となっています。
また、『決まっていないが候補者はいる』企業は、15~20%と多く、候補者がそのまま承継すれば、半分の企業は後継者決定ということになりますが、どうでしょうか?

 

次に、後継候補者について考えていきます。

 

➤承継候補者は、事業を継いでくれるだろうか?

『後継者は決まっていないが候補者はいる』という経営者に、候補者の様子を聞いてみた時の回答で多いのが

①今は他社に勤務している息子を候補者と考えている
②従業員への承継を考えているが、まだ話しをしてない

このふたつです。

それぞれについて考えてみましょう。

 

【他社に勤務している息子の場合】

『他社にいる息子に事業を継いで欲しいが、継いでくれない』

経営者のこんな声を良く耳にします。
継ぐという決断をしない理由として、 3つのバランスの問題 があるのではないでしょうか?

経営者の能力  子どもの能力

後継社長のメリット・やりがい  後継社長の苦労

後継社長の仕事の魅力  現在の仕事の魅力

 

後継候補者がこうしたことを総合的に考えて、事業の引継を選択しないということだと思われます。
社長の方も同じように考えて、息子に言い出せないまま、時間が過ぎてしまうというケースを目にします。

ただ経営者との会話の中で少し気になるのは、事業のことについて、息子と真剣に話しをしていない場合が少なくないということです。結果として、一般的に言われる、中小企業の厳しさや社長の大変さばかりが強調され、その企業の本当の価値や社長のやりがいといったものが伝わっていないという事実もあるように思います。

 

参照:相談事例1.『社長が長男に言ったひと言』

 

 


事業承継<相談事例集> ~目次~


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